JJ世代が結婚相手に年収700万円を求めるのは、案外正しい

結婚相手の男性に望む年収は700万円以上

女性誌「JJ」2019年2月号の「JJ世代の結婚白書2019」によると、女性の約60%が結婚相手に望む年収は700万円以上と答えたそうだ。「JJ」は10代~20代女性をターゲットとした雑誌だから、この結果だけを見ると、多くの大人は「何も現実がわかっていない」とか「若いから夢を見ているのだろう」といった感想を抱くかもしれない。

だが、本当にそうだろうか?

女性は自らに必要なパートナーを見抜く感性が鋭いという話も聞くが、実は結構適正な年収の男性を選んでいると言えるかもしれない。

金がなくては結婚で死ぬ

後2000万円問題の本質は、大半の国民に「死」を突きつけたこと」では、平均年収では経済的に破綻することを述べた。ここでも解説したとおり、子供一人を大学卒業まで育てようとすれば、最安でも2700万円程度は必要になり、住宅も購入するなら3000万~4000万円の資金が必要になる。

さらに、将来を見据えれば、できれば我が子により良い教育を提供したいと考える方も多いだろう。留学やレベルの高い学習塾に通わせるといった選択肢も視野に入れるなら、子育て費用はさらに大きく膨らむことになる。

「結婚は愛する人とするのが良い」というのは良くわかるし、理念として美しくても、結婚後に必要となる様々な支出を現実的に考えた場合、経済力のない男性を選ぶと生活が破綻してしまうのも事実である。愛はもちろん大切だ。しかし、どんなに愛していても、パートナーの選択によっては、甘い結婚生活や可愛い我が子の夢どころではなく、結婚を機に、死に絶えてしまうかもしれないのだ。

年収700万円の経済力

では、実際年収700万円の人は一体どれほどの経済力があるのだろうか。まずは「老後2000万円問題の本質は、大半の国民に「死」を突きつけたこと」で示したとおり、社会保険料を年収の15%と見積もり、さらに所得税や住民税といった税金を引き、実際の手取りを計算してみる。

①社会保険料(15%と計算)約105万円
②税金(所得税+住民税)約68万円
③1年間の手取り額(年収-(①+②))約527万円
④1ヶ月の手取り額約44万円
年収700万円の手取り額

このように、年収700万円の人の場合、毎月の手取り額は約44万円と計算される。 総務省統計局による2018年の「家計調査報告(家計収支編)年平均結果の概要」 によれば、二人以上の世帯の消費支出は1ヶ月あたり平均287315円なので、44万円からこの約29万円を引くと、15万円ほどの余裕があることになる。

この「家計調査報告(家計収支編)年平均結果の概要」では、住居費がかなり安く計上されているが、これは持ち家で、すでにローンを払い終えている家庭が前提となっているためで、結婚する年齢の男性の場合、まだ住宅ローンを払っている時期であったり、住宅は賃貸であることが想定される。しかし、毎月15万円ほどの余裕があるならば、住居費も相応にまかなえるだろう。

出産・子育て時期の余裕資金

また、何より出産や子育てをする時期は、女性の収入が減少する。産休・育休制度を上手く活用したとしても確実に何割かは収入が減り、出産・育児をきっかけに退職することも考えられる。とするならば、最悪、妻がしばらく無収入であっても、出産・育児中の家計を維持できる経済力があった方が安心ということになる。

これらのことを勘案すると、毎月の生活費における15万円程度の余裕というのは相応の安心材料になる。住居費(ローン、賃料等)が毎月10万円程度あってもまだ余力があり、多少節約を心がけたり、妻がパートでも復職すれば、それなりの生活ができそうである。女性が年収700万円を望むのは、決して的外れではないのだ。

年収500万円~600万円の経済力

参考までに、年収500万円のケースと600万円のケースも計算してみよう。

年収600万円年収500万円
①社会保険料(15%と計算) 約90万円約75万円
②税金(所得税+住民税) 約74.4万円約52.6万円
③1年間の手取り額(年収-(①+②)) 約436万円約372万円
④1ヶ月の手取り額 約36万円約31万円
年収600万円と年収500万円の手取り額

同じく総務省の資料にならい、毎月約29万円程度の支出を見込めば、毎月の余裕資金は年収600万円の場合で7万円、年収500万円の場合では2万円となってしまう。こうなると、妻が退職するという選択肢はあり得なくなってくる。

今の時代、専業主婦を望む女性は少数派としても、働きたくても保育園が見つからない等のケースは十分考えられる。しかし、年収が500万円~600万円の男性を選んだ場合は、どんなことがあっても仕事は続けなくてはならないのだ。しかも「できれば(各種保証の十分な)正社員で」である。

我が子への充実した教育だけでなく、万が一の想定外の出費や、働けないケースが発生することを勘案した場合、この年収帯の男性を選ぶのは、実は危険水域に足を踏み入れている可能性がある。ましてや平均年収の432万円の男性を選んだ場合となると、言うまでもない。女性が結婚に際し、年収700万円の男性を望むというのは、存外妥当性がある選択と言えるだろう。

年収700万円の男性はいるか?

では、年収700万円の男性を望むのは妥当性があるとして、そもそも年収700万円以上の男性というのはどれほどいるのだろうか?

国税庁の「平成29年分 民間給与実態統計調査」を参照すると、年収700万円超の男性は、約20%いることがわかる。こう聞くと5人に1人なので、それなりにいるような印象を受けるかもしれない。しかし、結婚を考える年齢層の平均年収を見てみると、

25~29歳393万円
30~34歳461万円
35~39歳517万円
40~44歳569万円
年齢別の平均年収(男性)
国税庁「平成29年分 民間給与実態統計調査」より

どこにも見当たらないのである。そして仮にもっと上の年齢層を対象としても、平均年収で700万円を超える年代は存在しない。国税庁の資料では、年代ごとの年収分布は掲載されていないので、それがわかる厚生労働省の「平成30年賃金構造基本統計調査 賃金の分布」を見てみよう。ここから年収700万円以上の男性を集計すると、

25~29歳0.1%
30~34歳 0.2%
35~39歳 0.5%
40~44歳 0.7%
年齢別 年収700万円以上の男性の比率
厚生労働省「平成30年賃金構造基本統計調査 賃金の分布」より

実に、どの年齢層でも1%も存在しないということになる。つまり、本当にごくごく少数の稼げる男性のみが対象ということになってしまう。

熾烈な戦い

このように見てくると、年収700万円の男性との結婚というのは、言い方を選ばなければ、相当熾烈な争奪戦になることは明らかである。1パーセント未満の男性を奪い合うとなれば、女性側にもいわば強力な戦力が望まれる。芸能人並みのルックスに加え、特別な才覚…そんな女性でもない限り、この戦いに勝つことはできないかもしれない。

今まで述べてきたように、結婚後の様々な支出を考えれば「愛さえあれば良い」とは到底言えない時代である。しかし、JJ世代が望む年収700万円以上の男性との結婚というのは、理にはかなっているが、自分にも相当な力量が求められる選択となるだろう。