日本のコロナウイルス対策~感染者と死者、世界との比較、PCR検査、ワクチン

毎日のように報道される増加する感染者数、医療体制の逼迫、経済の低迷、政治と社会の混乱。新型コロナウイルスは、日本人の生活を完全に破壊してしまったと言っていいだろう。

ただ、各メディアとも扱う分野によって一定の側面からの分析となり、また医療情報などは特に専門的にもなるので、「そもそも今後どうなるんだ?」という、多くの人が当たり前に抱く気持ちへの答にはなりづらいこともある。

そこで当メディアでは「何とかもっとわかりやすく伝えたい」という一点のみに絞って、本稿を掲載することにした。

日本のコロナウイルス対策は、アジアでは最低レベル

欧米やブラジル、インドのコロナウイルス感染者があまりに多いのは皆さんもよくご存じだろう。2020年9月9日現在のデータをまとめてみた。

感染者数死亡者数死亡率人口感染率
アメリカ6,325,807189,1873.0%3億2900万人1.922%
イギリス352,56041,58611.8%6700万人0.522%
ドイツ254,7829,4083.7%8350万人0.305%
フランス335,52430,7649.2%6500万人0.515%
イタリア278,78435,55312.8%6000万人0.460%
スペイン534,51329,5945.5%4700万人1.144%
ブラジル4,150,311127,0843.1%2億1100万人1.967%
インド4,280,42272,7751.7%13億6600万人0.313%
ロシア1,035,78917,9931.7%1億4600万人0.710%
オーストラリア26,3747702.9%2500万人0.105%
ニュージーランド1,782241.3%480万人0.037%

Googleのデータより。人口は2019年の国連データに基づく)

例えばアメリカの感染者数は633万人。日本の感染者は7万2000人程度なので、かなり少なく映るはずだ。しかし、アジア圏はそもそも欧米などと比べて感染者数が少ないことが分かっている。「清潔でうがい手洗いをよくするから」「シャワーではなく湯船に浸かる入浴習慣の違い」「土足文化でないため」「BCGを接種するからだ」等々言われるが、確実にこれが理由というものはない。

日本は、コロナウイルス感染者も死亡者も多い

では、今度はアジア圏に限ってデータをまとめてみよう。そうすると、日本のコロナウイルス対策はかなり残念なことがよく分かる。

感染者数死亡者数死亡率人口感染率
中国85,14446345.4%14億3400万人0.006%
韓国21,4323411.6%5100万人0.042%
台湾49571.4%2400万人0.002%
日本72,2341,3771.9%1億2700万人0.057%
タイ3,446581.7%6900万人0.005%
ベトナム1,054353.3%9600万人0.001%
マレーシア9,5591281.3%3200万人0.030%
フィリピン241,9873,9161.6%1億800万人0.224%
インドネシア200,0358,2304.1%2億7000万人0.074%

正直、中国はデータに疑問があるとも言えるが、それを抜きにしても、日本より感染者や死亡者が多いのは、フィリピンやインドネシアくらいしかない。おまけにインドネシアの人口は日本の2倍である。

PCR検査をしない国、日本

これもメディアでさんざん言われているように、日本は他の国と比べてPCR検査をしない国だ。いや、検査をしたら医療機関がパンクするのはよく分かっている。医療機関で必死に働く方たちのことを考えれば、安直に検査を増やせと言う気はない。また、新型コロナウイルスの潜伏期間は2週間程度と長いため、検査を受ける時には感染していなくても、その直後に感染してしまえば、検査結果としては陰性となってしまい、あまり意味がない。これもよく分かる。

しかし、検査をしない以上、現時点での正確な感染者数はわからないのだ。これが国民を不安にする。結局、上記の数字もあくまでも検査を受けて確認できた人の数なので、本当の感染者数はもっと多いことは誰でも気づいている。これも判明してきたとおり、コロナウイルスは無症状の感染者も相当数いるのだから。

おまけに物議をかもした現役医師によるTwitterの投稿によると、感染者数のカウントには、手書きのFAXで送られるデータも含まれていたという。さすがに事態を重く見た政府が早急にデジタル化を進めたものの、これで本当に先進国なのかと嘆きたくなる。実際政府や地方自治体による感染者の計測数が発表後に変化するのは、様々な事情でカウントミスが生じてしまうからだ。

各国は検査と隔離を積極的に実施

発生源となった中国では、批判はどうあれ、その共産主義的な強行体制でとにかく検査を徹底し、感染者を隔離しまくった。結果的に今は普通の日常を取り戻そうとしている。

韓国もまたPCR検査を徹底して感染を押さえ込もうとした。一時期はクラスターが再度発生したものの、現状の感染者数や死亡者数は、日本を大きく下回っている。そしてアジアだけでなく、世界でも新型コロナウイルス対策の優等生と言える台湾は、有能な政治家のリーダーシップと国民の緊密な連携、そしてテクノロジーの活用で、見事なまでに封じ込めに成功している。

ニューズウィーク日本版 7/21号 特集 台湾の力量

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台湾では、コロナ禍発生当初に品薄となったマスクの供給から渡航者の入国検疫、市中感染を防ぐためのソーシャルディスタンス確保や感染者の適切な隔離措置まで、全てITを駆使してスピーディーに対応している。

これらを率いる有名なデジタル担当大臣オードリー・タン氏は、10代でシリコンバレーで起業、Appleの顧問などを歴任、IQ180ともいわれる天才プログラマーだ。30代の若さで入閣し、今回のコロナ禍ではその実力で多くの国民を救った。どこぞやの国のIT担当大臣とは大違いである。

日本では他国のように軍隊を用いて強権的に国民を統制することなどできないし、法律上不可能なことも多々ある。しかし、ならば台湾のようにテクノロジーを用いて、もう少し国民に安心を提供してくれていたらと思わざるを得ない。

残念ながら、日本のコロナウイルス接触アプリは、開発も難航したうえ、善意で携わった開発者は、心無い批判まで浴びて疲弊してしまった。結果として未だ多くの国民がインストールすることもなく、その精度が確かなものとは言い難い。

いずれにせよ、多くの国が検査と感染者の隔離を積極的に行っているのを見ると、「病院が受け入れられるキャパがないため検査をしない」というのは、国民からすれば随分と奇異な方法論に映るのではないだろうか。これでは発表される数字をどこまで信用して良いのか疑問が残るし、本当の感染者数はもっと多いのは間違いない。

コロナウイルスのワクチンはまだ先、特効薬もない

コロナウイルスのワクチンはまだ先、特効薬もない

期待されるのはワクチンだが、これも当分先になりそうだ。そもそもワクチンというのは、開発に早くて数年、あるいは十年近くかかるものである。今は緊急事態のため、各国で開発を急いでいるが、仮に開発ができたとしても、副作用の確認や、世界への流通体制を確立するのにも時間がかかるため、現実的にはやはり数年は見ておいた方がいい。

トランプ大統領はいわゆる「ワープ・スピード作戦」で、1兆円以上の巨額予算を投じ、来年早々にもワクチンを誕生させるべく動いていたが、9月9日、ワクチンを開発する製薬会社の筆頭とも言えるアストラゼネカ社のワクチンに重大な副作用が判明。治験は中断されることになってしまった。もちろんアストラゼネカ社以外にも、モデルナ、ジョンソン&ジョンソン、ファイザーなど、名だたる企業が開発を進めているものの、なかなか光明は見えない。ロシアのワクチンは治験が未完了であまりに拙速であり、中国製のワクチンも不安が残る。2国のワクチンは、世界の医療関係者からも効果が疑問視されている。

中国・ロシアのスピード開発コロナワクチンは「普通の風邪」ベース 効果は7割未満との指摘も

(ニュースウィーク日本版)

また、ワクチン以外でも感染者の症状を和らげる薬として、厚労省の承認を5月7日に得たレムデシビル、他にデキサメタゾン、北里大のイベルメクチンなどがあるが、どれも治療薬の決定打にはなっていない。一時期話題になったアビガンも、明確な効果は証明されず、今は下火である。9月9日現在、日本集中治療医学会と日本救急医学会が治療薬のガイドラインをまとめている。

新型コロナ治療薬 患者の状態ごとのガイドラインを公表 2学会

(NHK)

感染するかどうかは、結局は運任せ

感染するかどうかは、結局は運任せ

前述のとおり、コロナウイルスは無症状の感染者がいる。これはとても厄介な特徴だ。健康そうに見える人でも感染者である可能性がある。

政府が盛んに警鐘を鳴らしている「三密」の状況を避けても、「絶対この状況なら感染しない」とは言えないのである。最近は、多くの感染者を出して目の敵にされてきた「夜の街」での感染だけでなく、感染経路不明者が増えているのをご存じだろう。

複数の人が集まるなら、そこにはどんな人が来るかわからない。一人ひとりがどこに行き、どんな行動をしていたのかは知る由もない。さらに今は家庭内感染も多い。これは学校や職場、日常生活のどこかで感染した人が、家族に感染させてしまっているということだ。つまり、市中感染がある。

結局、今の日本では、正確な計測もできないため、感染者はどこにどれだけいるかわからず、ワクチンも治療薬もないため、言い方を選ばなければ、コロナに感染するかどうかは「運任せ」ということになる。

もちろん、新型コロナは未知のウイルスだ。正確な対処法がないのは仕方ない。それは国民もわかっているだろう。しかし「運に委ねる」となると、これはかなり辛い状況だ。人と接することを仕事とするエッセンシャルワーカーの方や、満員電車に揺られるサラリーマン、みんな気が気ではないはずである。

コロナ禍における残念な政治

コロナ禍における残念な政治

こんな時こそ、政府や政治家がリーダーシップを執り、国民を導いて欲しいところではあるが、これもあまりに残念な状態となっている。未知のパンデミックである以上、政府が対応に苦慮するのはよく分かるし、単に政治批判しても意味がないことは重々承知している。

しかし、自粛による経済停滞で困窮する国民や企業への給付金手続きは、あまりに煩雑で実際の給付も遅く、欧米諸国に比べて予算も小さい。果ては海外メディアにはエイプリルフールの冗談とまで揶揄された「アベノマスク」、さらに「Go Toトラベル」等、どれも効果は疑問なものばかりである。

Go Toトラベルは、苦境にあえぐ観光・旅行業界の救済策なのは分かるが、果たして本当に効果があるのだろうか?これもまた手続きが煩雑で、登録を断念した旅館やホテルも多く、事業者の登録は6割止まりだ。そもそもこのコロナ禍で旅行をしたい人がどれだけいるのだろう?8月上旬に行われたブランド総合研究所の調査によれば、過半数の人は「旅行に行きたいと思わない」と回答している。8月下旬に、政府はGo Toトラベルの利用者数は420万人だったと胸を張ったが、前年の同時期の旅行客は延べ9500万人である。

批判殺到の「GoToトラベル」キャンペーン、どう進めれば成功したのか?

(Yahoo!ニュース)

そうこうしているうちに、当の首相は辞任してしまった。もちろん持病が理由でもあり、長い間本当にお疲れさまでしたと言うべきだろう。しかし今このような状況下の日本のかじ取りをしたいと思う政治家はいるのだろうか。もはや国会は次の首相選びに躍起になっているが、国民が望むのは次の首相が誰かということではなく、的確なリーダーシップに基づき、この国の惨状を少しでも改善してくれることではないか。あまりに国民のニーズと実際の政治とがかけ離れている。

コロナウイルスによって人の分断が生まれる

また、別の問題もある。日本も世界もこのコロナ禍に陥って半年。生活様式も仕事のスタイルも様変わりした。しかし、この期間中に目覚ましい事態の好転はなかった。

このような状況が続く中で、国民の意識にも差が生まれている。つまり、コロナを恐れて自衛を強化する人と、それを無視する、あるいは恐れても自衛しきれない人たちの分断だ。

この記事でも書いたが、自衛強化派の人たちは、テレワークなどリモートで仕事もできる知的労働者や富裕層だ。一方、人との接触が多く、自衛は難しいサービス業や飲食業に携わる人、派遣労働者やエッセンシャルワーカーがいる。

実は今軽井沢の不動産が大人気なのをご存じだろうか。コロナを恐れ、早々に雪山に避難するジャスティンビーバーのような海外セレブほどでなくとも、富裕層と呼ばれる人たちは、リスクの高い東京を結構離れているのだ。

リゾートマンションや不動産情報を提供する株式会社リゾートノートの発表によると、コロナ禍での問い合わせは前年の4倍近くまで増加している。つまり、富裕層は人の少ない安全な場所へ避難して自衛するが、自衛がままならない人たちほど、高収入ではなく、感染リスクの高い仕事に就いている。収入や仕事によって人の分断が起きているのだ。

そして、情報のとらえ方でも人の分断は起きている。自衛を重視したい人と、そうでない人との違いだ。これは職場や日常生活でも見受けられる。自衛を重視したい人は、三密になる会議や対面の打ち合わせは避けようとするが、とにかく出社を求める人や企業も存在する。感染リスクを考えて人に会うことを極力避ける人もいれば、外国のコロナパーティーなどは極端すぎるにせよ、ちょっと軽く会食する程度なら良いだろうと考える人もいる。

自衛を重視する人から見れば、そうでない人たちは「あまりにリスク管理がずさんな人」にしか見えず、逆にそうでない人たちからすれば、自衛を重視する人たちは「気にしすぎで社会生活がままならない人」としか思えないだろう。これはずっと平行線で、お互いの価値観が合うことはない。

コロナウイルスによって人の分断が生まれる

今後このような分断は、日本社会のあらゆるところで発生していく。貧富の差、職業の差、情報のとらえ方や価値観の差。これが歴然としてくると、社会は荒廃する。つまり「理解し合えない相手とは一緒にはいたくない」という志向が強まり、最悪は理解できない相手に対して攻撃しても良いと思うようになる。事実このような兆候はもう出ている。自分とは異なる意見を持つ人たちに対するSNSでの誹謗中傷、また、自粛しない人たちを猛烈に敵視するいわゆる自粛警察と、逆にマスクすら付けずに「コロナはただの風邪」だとデモをして山手線を一周する若者たち。

わかり合うこともなく、お互いの正義をかざし、相手を攻撃していく。コロナは厄介な病だが、それと同時に日本人の心も病ませる存在となってしまった。さらに日本の4月-6月期のGDPはマイナス28%となり、経済状況はリーマンショックを超えて戦後最悪、生活に困る人も続出している。政治も迷走を極めており、そう簡単に好転は望めない。秋冬にはコロナウイルスの再流行が確実視されているが、医療体制は逼迫しないのだろうか。結局多くの人は、不安を胸に抱えた日々を送り続けることになるだろう。ますますこの国が荒廃してしまわないことを祈るばかりである。