結婚は、女性にはメリットがあるが、男性にはメリットがあるか?

「婚活」というワードが一般的になった昨今、結婚を望む人たちは、皆パートナー探しに躍起になっている。平成27年の国勢調査によると、未婚女性は約1273万人、未婚男性は1613万人と、約340万人男性が多い。国勢調査は15歳~19歳、60歳以上も対象となるので、仮にこの年代を除外したとしても、未婚男性は未婚女性に比べて300万人以上多い。つまり圧倒的に男余りの状態である。これはアメリカや中国でも同様だ。

男余りである以上、女性が選ぶ側(優位)と映るこの現状に即してか、メディアでは「(女性向けに)結婚相手にはこんな男性を選ぶのが良い」「(男性向けに)女性に好印象を与えるにはどうするか?」といった特集も目白押しだ。だが、当サイトではあえて別の切り口で考えてみたいと思う。

女性には結婚で確実に経済的メリットがある

最初に言うと、女性は結婚すると確実にメリットがある。それは「経済的安定」だ。愛はどうなるのだという批判が嫌というほど飛んできそうだが、こう断言したい。もちろん愛は大切だ。好きな人と結ばれ、家族になることはとても素晴らしいことである。だが、結婚には生活が伴い、生活にはお金が必要なのである。

実際、朝日新聞が2018年末に行った調査でも、結婚相手を選ぶ際に「譲れない条件」として挙げるものは、「人柄」「価値観」が9割以上と最も上に来るが、女性に限っては「収入」を挙げる人が実に7割以上にのぼる。男性は条件に「収入」を挙げる人は3割にも満たない。女性にとっては、より多くの収入を得ることが結婚の目的の一つとなっている。

こういう状況を見てか、ネットでは「結婚したら夫は妻のATMになる」といった皮肉めいた揶揄も散見されるが、女性が結婚相手に経済力を求めるのには理由がある。女性の活躍が叫ばれて長い日本だが、相変わらず女性の収入は男性より低いのだ。国税庁の「平成30年分 民間給与実態統計調査」を見てみると、社会人になって間もない20歳~24歳時にはさほど差はないものの、以降どの年代でも女性の収入は男性より2割~5割以上低く、これでは一人では生活が全く覚束ないのである。

男性女性
20~24歳284万円249万円
25~29歳 404万円326万円
30~34歳 470万円 315万円
35~39歳 528万円 314万円
40~44歳 581万円 319万円
45~49歳 635万円 313万円
全体平均545万円293万円
男女の年齢階層別の平均給与
平成30年分 民間給与実態統計調査より

もちろん、女性の年収が低いのは、結婚して子供が生まれ、パートなどの非正規雇用となったためとも考えられるが、さすがに全員がそうではない。事務職やバックオフィスなどの補助業務や、さほど高給ではない介護士や保育士、販売員といった職業に就くのはやはり女性の方が男性より多いことも大きな理由と考えられる。

ハードワークをこなし、高給取りのいわゆる「バリキャリ女子」を除外すれば、未婚女性は結婚すれば確実に世帯収入が上がることが見込める。相手がよりリッチであるに越したことはないものの、基本的には自分より相手男性の収入の方が多いので、結婚を機に経済面での豊かさは増えると考えられる。これは女性にとって、結婚への大きな動機付けになるだろう。

DINKSなら勝ち組だが、子供を持ったら破綻

ただし、一つ注意しなくてはいけないことがある。低収入の女性がさほど年収の高くない男性と結婚した場合は、DINKS(Double Income No Kids)、つまり共働きで子供を持たず結婚生活を送る必要があるということだ。

JJ世代が結婚相手に年収700万円を求めるのは、案外正しい」で述べたとおり、子供を育てる費用は1人につき2000万~3000万円台と膨大だ。さらに広い住居も必要になり、プラス3000万円以上の出費を覚悟しなくてはならない。上記記事の中でも伝えているが、仮に年収500~600万円の男性と結婚したとしても危険水域なのである。ましてや平均年収に近い年収400万円台の男性を選んだ場合は、子供を持つのはあまりにリスキーだ。経済的に破綻する可能性が十分にある。

しかし、子供は持たず夫婦二人で生活するというのであれば、十分に安全圏に入る。子供を育てるのに必要な費用はかからず、住居も2DK程度で十分になる。産休や育休もないため、ずっと妻も正社員で働き続けるなら、キャリアも途切れず、夫婦で可処分所得を増やしていけるだろう。

ただ、結婚したら子供を持ちたいと思う夫婦も多いのではないだろうか。もちろん子供を持つことだけが結婚の目的ではないが、ずっとDINKSでいることが前提というのは、何とも複雑な気持ちになる人もいると思われる。個人の価値観と国の政策を並べて論じる必要はないが、子供を持たない夫婦が増えるなら、少子高齢化も解消されないだろう。

結婚における男性側のメリットは何か

結婚における男性側のメリットは何か

では今度は男性側からの視点で考えてみよう。述べたとおり、一般的に女性は男性より年収が低いため、結婚を機に経済的安定というメリットが入手できるが、男性にはどんなメリットがあるだろうか。

もちろん愛する人との生活、安らぎといった心理的な充足は素晴らしいものだ。家事も二人で分担すれば日常生活面でのメリットもあるだろう。ただ、一般的に女性の方が収入が低い以上、男性にとって費用面での負担は増えやすいはずである。

さすがに二人暮らしでワンルームというわけにはいかないだろうから、2部屋以上の住居に引っ越すケースは多いはずだ。そうなると、住居費を始め、各種生活費については、年収の高い男性側が多く負担することが考えられる。

ところが近年、こういった費用負担を嫌う男性が増えている。愛する人と一緒にいられるのは素晴らしいが、結婚すれば自分のために自由に使えるお金が減るのも事実である。また、前述のとおり、女性は結婚相手に経済力を求めるので、これでは「金のために結婚するのか」と思う男性が出てくるのも無理はない。

さらに、そうでなくとも収入面から結婚は絶対無理だと考える人も多い。事実、 国立社会保障・人口問題研究所が平成27年に実施した「第15回出生動向基本調査(結婚と出産に関する全国調査)」 を参照すると、 男女とも4割以上 が結婚にあたっての最大の障害は「結婚資金」と回答している。昨今はAK男子(あえて結婚しない男子)なる単語まで登場してきた。基本的に若い男性は収入が少ないため、結婚は経済的ハードルが高くなってしまっているのだ。

男性ならば独身が最高?

昔ならば、男女ともそれなりの年齢になれば結婚することを周囲からも求められたが、今はそんな時代ではない。独身でも楽しめることに事欠かず、リーズナブルなサービスもたくさんある。子連れでは行けないレストランやスポットでも遠慮なく出掛けられるし、何より稼いだお金は全て自分の自由に使えるのだ。

それでは寂しくなるのではという意見もあるだろうが、存外そうでもない。共通の趣味を持つ仲間はSNSでも見つけられるし、そもそも一人を楽しむのが好きで、パートナーと常に一緒にいる生活を望まない男性も多くなった。人気俳優の阿部寛さん主演のドラマ「まだ結婚できない男」は、前作から十年以上もブランクがあっての続編となったが、低迷するTV業界において、視聴率は初回から二桁台と絶好調だ(※ビデオリサーチ調べ)。もちろんドラマを論拠にはしないが、独身を続ける男性の生き方に対する理解や興味は世間的にも存分にあるように映る。

男性にとって結婚はリスクが高すぎる

男性にとって結婚はリスクが高すぎる

実は、メリットもあるものの男性にとって結婚とは、ある種のリスクに映っているのではないだろうか。実際結婚生活には大きな費用がかかる。結婚式や新婚旅行に始まり、先述のように子供を持てば、広い住居に加え、子供の教育費と養育費と、数千万円の出費を覚悟しなくてはならない。経済状況が一向に良くならない日本において、女性よりも収入が多いとはいえ、男性の給料が上がり続ける保証はどこにもない。数千万円の出費が確定するとなると、これはとんでもなく大きなリスクでもある。

当然、独身でいれば、これらの費用はなくなるため、出費は格段に減り、可処分所得は圧倒的に増える。一人でも楽しめることが増えた現代において、「お金も時間も自分の自由に使える」という選択は、結婚より魅力的に映っても不思議ではない。仮にパートナーが欲しくなっても、子供を持たないなら、結婚より恋人関係の方がはるかに合理的なのだ。言い方を選ばなければ、恋人という関係なら、付き合うことも別れることも自由であり、煩わしい親族との関係もなく、法的な強制力もないのだから。

高収入な男性ならばどうか

いや、そうは言っても、それは結婚したり子供を持つことが困難な男性の話なのでは?と思う方もいらっしゃるだろう。たしかに様々なデータでも立証されているとおり、男性は収入が増えるにつれて結婚する率は高まる。

しかし、「 JJ世代が結婚相手に年収700万円を求めるのは、案外正しい 」で述べたとおり、結婚して子供をもうけても経済的に「安全圏」と思える年収700万円台の結婚適齢期の男性は、実に1%もいないのである。さらに、これらの高収入な男性は、言うなれば「婚活市場での市場価値が高い」のだ。女性からの人気(需要)が高く、簡単に言うと「モテる」のである。

高収入な男性ならばどうか

収入が高くても、性格や人柄が良くないと…というのはごもっともだが、高収入な男性というのは基本的に高学歴や高スキルであり、頭が良くて仕事ができ、コミュニケーション能力も高い。それゆえ高給取りになっていると言えるだろう。また外見や身なりについても社会的地位があればこそ気を遣うし、仮にセンスがなかったとしても、お金で解決できてしまう。例えば、美容院で自分に似合う髪形にしてもらえば良いし、衣服なら少し高級な洋服店でぴったりのものを見立ててもらえばいい。さらに今ならメンズエステまである。芸能人のようなルックスは無理でも、女性が男性に求める清潔感やオシャレな雰囲気は十分実現できるはずである。

このように考えると、高収入な男性ほど、自分が相手を選ぶ側に回ることになると思われる。しかしモテる男性は引く手数多である。様々な女性と知り合い、交際することも多い。そうなると、単純に「モテたい」「遊びたい」というような男性ならではの心理を度外視しても、パートナーを一人に決定する「結婚」という選択に至るには、かなりの時間を要しそうである。さらに彼らは基本的に忙しく、仕事も充実している可能性が高いのだ。

もちろん、大切な女性と結婚し、子供をもうけて家族になりたいと望む男性ならそれで良い。何度も言うとおり、それは素晴らしい選択である。しかし、いかに高収入であっても、結婚費用や子育て費用は安価ではない。独身なら好き放題にできるが、結婚を機に数千万円の費用は覚悟するとなると、躊躇する男性も多いのではないだろうか。

結婚を望んでいるのは女性だけ?

結婚を望んでいるのは女性だけ?

独身で生きる人たちの実情やライフスタイルの分析について、「超ソロ社会」「結婚しない男たち」などの有名著作を持つ荒川和久さんは鋭い指摘をしている。メディアなどでよく伝えられる、「ほとんどの未婚男女が結婚したがっている」というのは実情にそぐわず、質問が「いずれ結婚するつもり」と「一生結婚するつもりはない」という二択なので、ほぼ全ての人が前者を選んでしまうというのだ。

たしかにすぐに結婚する気がなくても、いずれは…と考える人は多いだろう。これでは結婚する意志がどれほど強いのかがわからないのである。そこで、多く論拠に使われる「第15回出生動向基本調査(結婚と出産に関する全国調査)」を再度より詳細に見てみよう。

すると、18~34歳の男女を対象とし、「いずれ結婚するつもり」と「一生結婚するつもりはない」の二択の質問をした場合、やはり前者を選ぶ男性が85.7%、女性が89.3%となっていることがわかる。メディアはこの数字だけを見て、9割近い未婚男女が結婚したがっていると言っているのだ。しかし、注意しなくてはならないのはそれ以降の項目である。「ある程度の年齢までに結婚しようと考える」未婚者、つまり、もう少し具体的に結婚を考えている未婚者の割合は、男性が55.2%、女性が59.3%であり、かなり減ってくる。

さらに、「一年以内に結婚する意志のある」未婚者、つまり、より積極的に結婚を望む未婚者の率を調べると、男性は45.5%、女性は52.6%になるのである。総じて女性の方が結婚の意思が男性よりも強いことがわかるだろう。そして男性は、すぐに結婚したいという人は実は半数以下であり、まだ結婚するつもりはないと考える人の方が多い(52.6%)のである。

300万人の男余りの嘘

この第15回出生動向基本調査に、同じ平成27年の国勢調査のデータを合わせて考えると、より正確な数値が見えてくる。出生動向基本調査では、「一年以内に結婚する意志のある未婚者の比率」を男女年齢層別に掲載しているので、これに国勢調査からわかる同年齢層の未婚者数を照合し、実際に「一年以内に結婚する意志のある未婚者の人数」を算出してみよう。

一年以内の
結婚意思がある率(①)
男性
未婚者数(②)
一年以内の結婚意思
がある男性未婚者数(①×②)
20~24歳 26.9%(※)2,887千人777千人
25~29歳 58.3%2,225千人1,297千人
30~34歳 73.9%1,605千人1,186千人
合計 3,260千人
一年以内の結婚意思がある男性未婚者数
一年以内の
結婚意思がある率(①)
女性
未婚者数(②)
一年以内の結婚意思
がある女性未婚者数(①×②)
20~24歳 33.6%(※)2,632千人884千人
25~29歳 73.4%1,835千人1,347千人
30~34歳 82.7%1,163千人962千人
合計 3,193千人
一年以内の結婚意思がある女性未婚者数

(※)18~24歳の一年以内の結婚意思がある率を使用

ご覧のとおり、積極的に結婚を望む未婚男性と未婚女性の差は約6万7千人であり、300万人の男余りという情報からはずいぶんとかけ離れているのがわかるだろう。さらに、日本人の初婚年齢の平均は、平成22年以降、ずっと女性は20代後半、男性は30代前半なので、この年代にフォーカスすると、積極的に結婚を望む25~29歳の未婚女性数は1347千人に対し、積極的に結婚を望む30~34歳の未婚男性数は1186千人と、約16万人も女性の方が多くなってしまうのだ。

これでは女性が選ぶ側で優位となる婚活というのは難しい。ましてや相手を高収入な未婚男性とするならば、より競争は激しいのである。このような結果に鑑みると、「女性は自らの生活の安定のためにも(経済力のある男性と)結婚したいが、男性は独身の方が自由で費用面でも低リスクなので、そうそう結婚には踏み切らない」とは言えないだろうか。

実際、日本の年間婚姻件数は2008年から10年以上、東日本大震災の翌年となる2012年を除いてずっと下降傾向であり、2018年にはついに60万組を切っている。世は婚活ブームのように思えるが、現実には成果に結びついていないのである。

2009年707,734 組2014年643,749 組
2010年700,214 組 2015年635,156 組
2011年661,895 組 2016年620,531 組
2012年668,869 組 2017年606,866 組
2013年660,613 組 2018年590,000 組
年間婚姻件数の推移
厚生労働省 平成30年(2018)人口動態統計の年間推計より

男女の思惑はいつの時代でも契合しないものだが、今の日本において結婚とは、もはや制度疲労を起こしており、双方のニーズを汲み取り、結ばれて生活を共にしていく基盤としては、機能していないのかもしれない。