キャバ嬢も、港区女子も近い将来絶滅する

六本木、銀座、歌舞伎町といった夜の繁華街。きらびやかなネオンの下、綺麗に着飾ったキャバ嬢たちを見かけることも多い。有名なキャバ嬢はTVや雑誌といったメディアにも取り上げられ、SNSでも多くのフォロワーを獲得している。実際、他のアルバイトより時給も高額なため、若い女性がキャバ嬢として働いてみたいと思うのもわかる。

しかし、一見華やかに見える夜の世界だが、キャバクラをはじめとしたバー、クラブは年々減少の一途をたどっているのだ。警視庁生活安全局のデータを見ると、キャバクラなどが該当する「接待飲食等営業」の店舗数は、平成26年の約67,000店から平成30年には約64,000店と、実に3,000店以上が閉店している。

平成26年 平成27年 平成28年 平成29年 平成30年
67,23365,68964,59963,95663,756
接待飲食等営業の営業所数
(平成31年警察庁生活安全局保安課 の資料より)

時代に合わないビジネスモデル

なぜこんなにも一気に衰退してしまったのだろうか?端的に言うと、「もう時代に合っていない」からではないだろうか。多くの人は、キャバクラに定期的に通ってお金を使い、さらに同伴、アフターなど、キャバ嬢にお金を使うだけの余力などない。

値段が高すぎ。経費で落ちない。若年層のアルコール離れ。

派手な飲みの場が提供されるイメージもあるキャバクラだが、常識で考えれば、そもそも単価が高すぎる。数時間いて数万円、ボトルを入れ、シャンパンでも開ければ、それこそ数十万円、百万円を超えることもある。サービス料、消費税、カード手数料も10%~30%上乗せされるので、当然原価とはかけ離れてくる。「それが夜の世界なのだ」という意見もあるだろうが、残念ながらいくら何でも古すぎる。もはやそんな時代ではない。

老後2000万円問題の本質は、大半の国民に「死」を突きつけたこと」で書いたように、日本人の平均年収は400万円台、さらに最も多い層の年収は300万円台である。この収入では、大半の人はどう考えてもキャバクラに通い、キャバ嬢に金を落とす余裕などありはしない。

値段が高すぎ。経費で落ちない。若年層のアルコール離れ。

また、以前ならば、企業が接待としてキャバクラを使うこともあっただろうが、税法が変わり、経費として認められないケースが増えている。会社の経費ではなく、個人負担となれば、1回数万円の出費を月に何回も繰り返すのは、仮に平均年収より給与が高くても、多くの人にとっては無謀な話である。

加えて、若者のアルコール離れも大きい。ネットでも多く情報が散見されるが、今の若者は「飲まない」のだ。それこそ上司やお客さんとともに飲み屋で語り続けるなどというのは過去の話。20代の若者は、実に10%程度の人しかアルコールを飲む習慣がない。

総数20代30代40代50代60代70代以上
男性飲酒習慣
あり
33.0%10.9%29.0%37.9%46.1%41.8%23.4%
飲酒習慣
なし
67.0%89.1%71.0%62.1%53.9%58.2%76.6%
女性飲酒習慣
あり
8.6%4.4%9.2%15.6%12.4%9.9%2.1%
飲酒習慣
なし
91.4%95.6%90.8%84.4%87.6%90.1%97.9%
飲酒習慣の状況、年齢階級別、人数、割合-全国補正値、男性・女性
(週刊朝日2018年9月28日号より)

アルコールを飲まないのが悪いと言っているのではない。現代はアルコール以外にも楽しめる趣味や遊びがたくさんあるし、アフターファイブをプライベートな時間に充てるのも個人の自由である。「上司に気を遣いながら飲むなんて嫌」「どうせ飲むなら気の合う仲間と」という若者の意見もよく耳にする。年配の皆さんは残念かもしれないが、これもまた真実である。

さらに、もとより若年層は収入が低いのだ。「キャバ嬢に気を遣ってキャバクラの楽しみ方自体わからない」という人もいる。こうなると、通常の飲食店よりはるかに高額なキャバクラに行こうという気には、そうそうなれないだろう。

高収入な人たちもキャバクラに行かなくなった

では、高収入な人たちをターゲットにすればとも思うが、彼らもまたライフスタイルが変化している。夜な夜な飲み歩く人もいるだろうが、健康志向も強まっている昨今、朝はランニング、毎週ジムで汗を流すといった定期的な運動を習慣としているエグゼクティブは多い。

高収入な人たちもキャバクラに行かなくなった

金持ちは貧困に興味がない」でお話を伺った経営者に聞いたところによると、やはり健康に気を使う経営者は増え、昔ながらのいわゆる飲みニケーションといった考えも衰退しており、朝までキャバクラなどで飲むケースは少なくなったという。その方の年収は数千万円。正直キャバ嬢にいくら使っても全く問題はなさそうだが、質問してみると意外な答えが返ってきた。

接待の場として使うことは多いのではという質問には、「別にそういう接待を喜ばない人もいるし、相手は裕福であるがゆえに舌の肥えた方が多い。そんな人との会食ならば、気の利いた料理とお酒をふるまってくれる個室の高級店の方が、落ち着いていて会話も弾む」とのこと。キャバ嬢がいてくれることで話が盛り上がることもあるのではと尋ねても「会話が上手い女性は少なくなりましたよ。キャバ嬢も派遣が増えたせいかもしれない。でも、そもそも仕事の話をする場ではないですしね。ガヤガヤしているし」と笑って答えていた。

キャバ嬢はオワコン

若い世代も、年上の高収入な層もさほどキャバクラを使わないとなると、当然商売として立ち行かなくなる。冒頭で述べた店舗の減少は正しくその象徴であろう。もちろん、従業員の給料も下げざるを得ないので、ホールスタッフはじめ、キャバ嬢の給料も減少していくことになる。今後は店舗のさらなる減少に加え、キャバ嬢も高給は取れない仕事になるのではないか。

そして上述の経営者は興味深い指摘をしていた。「だって●●さん(インタビュアーの名前)、キャバ嬢になってどんなスキルを習得したり、経験ができると思う?会話のスキルがつく?いろんな人に会える?…いやいや、それなら野村証券でもリクルートでもいい、営業が強い会社の営業マンになってバリバリ仕事した方が、よっぽど会話のスキルが上がるし、知識もつく。偉い人にだって会える。その方がずっと有益だよ」。

キャバ嬢はオワコン

なるほど…。では、若い女性が期間を決めてキャバ嬢としてアルバイトするというのが良いのでしょうかと尋ねると、「もちろんどんなバイトをするのもいいけれど、若いうちにあまり金銭感覚が狂ってしまってもね。シフトをたくさん入れれば、それなりにまとまったお金になるから、その収入をベースとした生活に慣れてしまうと、年齢が高くなってキャバ嬢を辞める時、スキルもキャリアもない状態で、なおさら(キャバ嬢ほど稼げない)一般企業への転職も難しくなるからね」と答えていた。

どんな仕事を選ぼうが、それは本人の自由だ。職業に貴賤はない。だが彼の言うように、この目まぐるしい現代において、キャバ嬢になって何らかのビジネススキルがつくかと言われると疑問ではある。また相当地位が高く、金持ちの人種に普通のキャバクラで出会えるとも考えづらい。たしかにキャバ嬢は、自分のお店を持つでもしない限り、若いうちしかできない仕事でもある。一時的に収入は増えても、それが永続するわけではない。さらに一定年齢を過ぎて転職しようにも難しい。

このように見てみると、利用者は年々減少し、給料も安くなる、スキルもキャリアもなくジョブチェンジも難しい、キャバ嬢はいわば「オワコン」と思えてならないのだ。

港区女子もオワコン

「港区女子」という単語をご存知だろうか?雑誌「東京カレンダー」によく出てくる、美人で仕事もこなすキャリアウーマンで、食事やデートは高級店や流行りのレストラン、裕福な男性との出会いを望み、このようなスポットが多くある港区を活動拠点とするので、通称「港区女子」と呼ばれる。

もちろん、東京カレンダーは雑誌として読者の興味を惹くよう「港区女子」を題材に様々な記事を書いているが、先述の経営者は「港区女子」もいわばオワコンだというのだ。理由を尋ねてみると、気分を害される方もいるかもしれないが、端的に「若さとコスパで負ける」という。

港区女子もオワコン

仕事もできて美人な女性なら文句がないのではという質問にも、「大体、港区女子は20代中盤~後半。でも、そうなると、遊び慣れた子ほどそれなりに良い店も知ってるし、プレゼントにブランド品だって欲しがる。ただ、その人にそれだけの価値があるかと聞かれたら、微妙でしょうね。でも例えば大学生なら、高級店に足しげく通っているなんて子は少ないし、ちょっと気の利いたレストランでも十分喜ぶ。若くて元気だし、そうそう高い物を要求することもない」という。さらに「港区女子はタクシー代を欲しがるけど、学生は電車で帰ろうとするよ(笑)。もちろん遅くなったらタクシー代はどんな相手にも渡すけどね」と付け加えていた。つまり、身も蓋もない言い方をすれば、若い女性の方がコスパが良いのだ。

ある程度社会経験を積んだ女性の方が、仕事の話も分かり、会話が弾むのではという問いに対しても、「真面目な仕事の話は、自社の役員や他の社長たちともしますからね。別にそんなに求めていないんですよ(笑)。楽しくただ飲みたいなら盛り上がる方がいい。そんな時、港区女子より若い子の方が選ぶお店もリーズナブルだし、ともすると今の学生さんは真面目だから、社会経験がない分、ちゃんとこちらの話を聞いたりもする。そこからインターンが決まった学生さんまでいましたよ。あと、我々は社会人の事情ならよく知っているけど、学生さんの実情は知らないことも多いから、かえって興味深い話も聞けることもある」と答えていた。

ちょっと考えさせられる回答である。言われてみればそうかもしれない。そこで、社会経験を積んだ女性は真剣な交際や、結婚の相手として見るということですかと尋ねると、「そうですね。ただ、港区女子はないかな。これでも僕はマシな方で、女性との時間にお金がかかるのは別にいいと思うけど、今の若い男性はずっとシビア。女性にもしっかりと稼ぐ力を求めるし、本人が十分裕福でも、相手の財布をあてにする女性はね…今は流行らない。そしてしっかり稼ぐ力を持ってる女性は忙しいから、夜な夜な六本木や西麻布で遊ぶ暇なんてないよ」と笑いながら答えた。

キャバ嬢にも港区女子にも投資価値がない

たしかに彼の話はあくまでも一意見である。しかし、存分に収入があっても、キャバ嬢や港区女子には惹かれない。これはつまり、結局キャバ嬢にも港区女子にも投資価値がないということなのだろう。有能で裕福な人ほど、価値あることにはお金を使うが、無駄なことは嫌う。相手から得る情報や体験もさほど有意義ではなく、コストも高いとなると、財力は十分にあったとしても、そのお金と時間を使ってまで会いたいとは思わないだろう。

CtoCビジネスがキャバ嬢と港区女子の絶滅を加速させる

CtoCビジネスがキャバ嬢と港区女子の絶滅を加速させる

興味深い話を聞けたが、そもそもキャバ嬢とも港区女子ともさほど接点を持たないとするなら、どうやって一緒に飲む女性を見つけるのだろうか。答えはシンプルで、Patoなどのギャラ飲みアプリだという。女子大生からOLまで様々な年齢層の女性がおり、手軽でリーズナブル、多くの人が使うという。

ここでは趣旨が異なるのでアプリの解説などはしないが、一つすぐ分かることがある。これらギャラ飲みアプリは、個人の住居を貸し出すAirbnbや、個人の車をタクシー代わりにするUberなどと同じCtoCビジネスなのだ。

CtoCの強みは、今まで会社などが仲介していたビジネスを中抜きし、個人間の取引とすることで利用者コストを下げることにある。女性との出会いや飲み会もその対象となり、出会い系のアプリやギャラ飲みアプリが流行っているのだ。

こうなると、キャバクラは最も痛手を負う。そもそもキャバクラの飲み代が高いのは、派手な内装や店舗の賃料、ホールスタッフ、キャバ嬢たちの給料その他諸々が代金に加算されているからである。アプリで出会うのであれば、賃料も店舗費用も計上されないので当然安くなる。多くの人がアプリを使うのも納得できる。

また、これらのアプリは女性側にもメリットがある。もちろん見知らぬ人と出会うのだから注意は重々必要だが、基本的に登録も操作もオンラインであり、自分の空いた時間に好きなように働けるし、出勤義務もない。こうなると学生など若いユーザーも、割の良いバイトの一つとして利用するようになるだろう。

さらに、先ほどの経営者の話ではないが、若い学生はそれほど高額のギャラを要求しないとしたら、アプリで出会う方がよりリーズナブルでコスパが良くなり、港区女子を誘うメリットもなくなってくる。むしろデジタルネイティブな今の学生こそ親和性が高いかもしれない。SNSでのコミュニケーションに慣れている若い世代こそ、見知らぬ相手とも上手にやり取りし、自己PRする術を心得ている可能性は高い。さらにCtoCの特性を巧みに活用し、店舗を持たず、コスパもアピールすれば、相応に稼ぐかもしれない。

このように考えると、やはりキャバ嬢も港区女子も、もはや時代に取り残された存在のように思えてくる。きらびやかな女性であればお金を稼げる時代はとうの昔に終わっている。現代の生き方を心得た若い世代も台頭する。ただでさえ、多くの日本人の収入は上がらず、皆生活に四苦八苦しているのだ。夜の街の衰退は止まらない。近い将来、キャバ嬢も港区女子も「そういえば、そんな単語があったね」と言われる日が来るのだろう。