2020年7月5日の東京都知事選。大方の予想どおり、小池百合子氏が圧倒的大差で快勝。Twitterでは、#都知事選を史上最大の投票率にしようというハッシュタグも乱れ飛んだが、結果的には何も変わらなかった。
それでも投票に行った方、諦めて行かなかった方。また、三密になりそうな投票所にリスクを感じて行けなかった方もいるだろう。
選挙後に言うのはフェアではないが、今回の都知事選は多分に出来レースだった。つまり、結果は最初から見えてしまっていたのだ。しかも恐らく告示日の時点で。
対抗馬なしの都知事選
そもそも今回はロクな対立候補がいない。ホリエモンこと堀江貴文さんが出馬するかとも一瞬思われたが、本人はあっさり否定。国会にはホリエモンの否定派も多く、あれだけビジネスで様々な展開を行い、経済的にも自由な堀江さんが、慣例や癒着でがんじがらめの政界に行くメリットなどない。
他の候補者は見るも無残だ。「百合子か俺か」「コロナはただの風邪」と言われても…。都知事選に立候補するなら300万円あれば良いが、都政などどうでもよく、名を売りたい人には手ごろな宣伝広告に映ったのだろう。
都民は対抗馬を見るにつけ、半ば呆れ、諦めてしまったはずである。ならばコロナ対応に問題があっても、まだ小池氏の方が良いと思うのは自然な流れだ。実際、投票率は55%。前回よりも下がり、約半数は投票に行かなかった。
選挙活動はできない
第一今回は、コロナの影響で積極的な選挙活動ができない。都知事選の告示は6月18日。6月2日から続く東京アラートを11日に解除し、外出自粛、休業要請等の緩和ロードマップにおける「ステップ2」から「ステップ3」に移行して約一週間。経済活動の本格再開に動き始まった頃である。
しかし現実には、ステップを進めるにつれ、コロナウイルスの新規感染者はじわじわと増加。多くの都民が不安にさいなまれるようになる。これではどの候補者もまともな選挙活動になど乗り出せない。都民もまた、選挙候補者よりも自らの感染リスクの方が気になるのが当然だろう。
しかし小池氏だけは毎日映る
そんなさなか、小池氏だけは毎日テレビにもネットにも露出し続ける。現都知事としてコロナウイルス関連の現状報告、会見、方針説明など、多くのメディアを相手に答弁し、感染者が何人になろうが、東京アラートとは何だったのかわからなくても、とにかく露出し続けるのだ。
さらに彼女は元キャスターである。答弁の内容に疑問符だらけの都民は多くとも、メディア対応には圧倒的に慣れている。他の候補者が惨憺たる人選で、ろくに選挙活動もできないとなれば、小池氏にとっては正直「楽勝」の選挙戦だったのではないだろうか。
実は対立候補を立てると脅された
「楽勝」で選挙を進められる小池氏。しかし一つだけ解せない点がある。告示日の6月18日の翌日は、ほぼ全ての業種の再開、他県への移動も認められた日である。
効果の是非はともあれ、あれだけ都の金を大盤振る舞いしてまで、都民と事業者に求めた自粛。ステップが進むごとにコロナウイルスの感染者は増えているにもかかわらず、半ば強引なまでに全面解除に踏み切った。ここに多くの都民は疑問を感じたはずである。
一つ考えられるのは、経済を全面再開しなければ、ホリエモンでもない、その他のどうでもいい候補者でもない、もっと有力な対立候補を立てると、より上層の権力から詰め寄られたのではないかということだ。
陰謀論じみた話は良くないだろう。しかし、1兆円近い都の金をバラ撒いてまで経済活動を止めたのに、あそこまで矢継ぎ早に経済を全面再開する理由が見当たらない。しかも告示日の翌日に、である。つまり、告示日には経済の全面再開を決定していたことになる。疑念は尽きない。
勝っても茨の道
しかし経緯はどうあれ、敵も皆無の小池氏は楽勝だった。得票率は59.7%。過去6番目の得票率という圧勝で、任期は続く。ただ、前述のとおり、1兆円も大盤振る舞いした都の金は、残り1000億円も残っていない。オリンピックの招致も諦めていないようだが、これからどうやっていくのだろうか。
コロナウイルスの新規感染者は、7月に入り、毎日軒並み100人を超えている。夜の街を中心に検査を多く行っているからだと言われても、それだけで都民が納得するわけもない。コロナウイルス感染者には無症状の人も多く、どこで他人に感染させているかはわからない。
これでもし再度緊急事態宣言を出さざるを得ないような状況になったらどうするのだろう。もう補償をできる資金が都にはない。
小池氏にとって、選挙は楽勝だっただろうが、どう考えてもこれから先は茨の道しか待っていないはずである。