自粛解除を迎えて~満員電車、学校再開、感染者増加

6月1日、コロナ禍での長い自粛生活を経て、ついにその自粛が解除された。長く待ちわびた人もいるだろう。しかし、自粛が解除されたからと言って、以前と全く同じ世界が戻ってくるわけではない。

当たり前の話だが、いまだ新型コロナウイルスに対しては、ワクチンもなければ特効薬もない。もちろん、感染自体もなくならない。当然である。ウイルスはまだ我々の周りに厳然と存在しているのだから。

コロナ前と同じ満員電車、学校の再開、しかし感染者は各地で増加

ところが、6月1日は企業活動を再開させる会社も多いということもあり、あれだけゼロにすると小池都知事が公約していた満員電車もあっさり復活してしまった。Twitterでは「満員電車」がトレンド入りし、阿鼻叫喚である。

ひたすら三密を避けるようにアナウンスし続け、事業者も死活問題でありながら営業自粛をしてきたのは一体何だったのだろう?満員電車とはいえ、窓を開けておけば大丈夫だという論もある。しかし、雨の日や冬になったらどうするのだろうか。さすがにずっと窓を開放し続けるわけにもいくまい。

今日満員電車に乗りながら出社した方たちは、恐怖におののいていたことだろう。そしていつか「こんなに混雑した密閉空間では、クラスターが発生してしまうのではないか」という猛烈な不安とも隣り合わせだったはずである。

このコロナ禍で、テレワークが大きく発展した。多くの企業がテレワークを導入し、存外テレワークで済む仕事も多いことを多数のサラリーマンも実感している。なのになぜ自粛解除となると一蓮托生、一斉出社となってしまうのだろうか?理解に苦しむ。

そして会社員だけではない。学校もまた再開である。ずっと小さなお子さんを家庭で面倒を見るのが難しいこと、また学生のように若い人たちは、仮に感染しても重症化しないと言われるのもわかるが、子供を持つ親御さんたちは不安で仕方がないだろう。こちらも同じく「学校再開」というワードがトレンド入りしていた。

何よりも、東京より先に緊急事態宣言を解除した北九州市では、日に日に感染者が増え、ついに小学校でもクラスターが発生。再度、市内の各施設を閉鎖することにしている。

国内感染者、新たに36人確認…北九州は小学校でクラスター発生

https://www.yomiuri.co.jp/national/20200531-OYT1T50153/

いまだコロナウイルスは終息していないのに自粛を解除した

簡単な話である。今までは自粛要請により、多くの国民が人と接せぬよう生活に気を遣ってきたが、それが解除されれば、ウイルスが消滅していない以上、また感染は拡大するということだ。

もちろん、いつまでも自粛生活を続けるわけにはいかない。経済が完全に停止すれば、仕事がなくなり、生活ができなくなる人が続出してしまう。しかし、今までは自粛を強く要請したのに、解除するとなると感染が続出しようが解除してしまうというのは、いくらなんでも無謀、無策ではないだろうか。

ウイルスの輸入でも始める気か?

これだけではない。徐々に外国からの渡航者も受け入れ始めている。まずは タイ、ベトナム、オーストラリア、ニュージーランドの4か国から入国制限を緩和する。何も鎖国をしろと言っているのではない。海外との直接的なやり取りが必要な企業もあるだろうし、ニーズが存在するのもわかる。

しかし、この数日で外国から訪日した人たちは、20人近くもコロナウイルスに感染していたことが判明している。

これでも渡航者の受け入れを考えていくとのこと。ウイルスの輸入でも始めたいのか?と問いたくなる。まだ先とは言うものの、感染源となった中国、すぐそばの韓国からの旅行者も受け入れを検討していく方針だ。

韓国は感染終息をアピールしたが、直後クラブでのクラスター発生、再度感染拡大があった。また、中国人がコロナ後に旅行したい国ランキングで日本は1位である。評価されるのはありがたいかもしれないが、多くの日本人が抱く中国人旅行客への抵抗感は、政府が想像する以上ではないだろうか。もういい加減、日本の観光地もインバウンド頼みは止めた方がいい。

求められているのは納得のいく説明

コロナウイルスはあまりに厄介な災いだ。上記のとおり、いまだにワクチンも特効薬もない。結局のところ、100%の安全はないのだ。

だからと言ってずっと家に閉じこもっているわけにも行かない。恐らく国民はそれをきちんと理解している。未知の災害である以上、政府に完全な解決策を求めているわけでもないだろう。

ただ、多くの国民が求めているのは納得のいく説明なのではないだろうか?

未知なものは未知で仕方ない。しかし「こんな方針で、この基準で自粛して欲しい」「これをクリアしたら、このような段階を経て経済を再開していく」「論拠はこのデータで国民すべてが閲覧できる」「この数値を超えたら危険とみなす」等々、しっかりと説明されれば、少なくとも納得がいくのではないか。

もちろんメディアの責任もあるとは思うが、国民にはそのような説明が届いているとは一向に見受けられない。これでは欧米に比べて圧倒的に死者が少ないにもかかわらず、内閣支持率がひたすら下がるのもやむを得ないだろう。

納得のいく説明がなければ、人は積極的に動けない生き物だ。結局このままではいつどこで感染するわからないリスクを抱えつつ、半ば運任せに日常を過ごせと言われているのと同じである。

残念だが、まだ当分葛藤の日々は続くだろう。