コロナで芸能人の収入は激減し、芸能界に見切りをつける

最近、芸能人が事務所を離脱しているニュースを多く目にするようになったとは思わないだろうか。ざっと列挙してみても、

米倉涼子さん 2020年3月末にオスカープロモーション退社
柴咲コウさん 2020年4月スターダストプロモーション退社
ブルゾンちえみさん 2020年3月ワタナベエンターテインメント退社
栗山千明さん 2020年3月スペースクラフトエンタテインメント退社
中居正広さん 2020年3月末ジャニーズ事務所退社
手越祐也さん 2020年6月ジャニーズ事務所退社

このように、かなり有名どころの芸能人も事務所を去っている。もちろん事務所の方針が合わない、ギャラに納得できないといった問題から、本人の素行が原因など、様々な理由があるだろう。

彼らは退社後、こぞってツイッター、インスタグラム、YouTubeなどのSNSアカウントを開設し、知名度を活かしたPRを展開している。

芸能界に一体何が起こっているのだろう?今まではどこかの事務所に所属し、そこで様々な経験と実績を積んで、華やかな表舞台に立つというのが定番だったはずだ。

芸能人は食べていけない

結論から言ってしまうと、もう芸能人の大半は食えなくなってきているのではないか。コロナの影響で、取材も撮影も激減し、コンサートやライブ、ファンとの触れ合いもできない。当たり前の話だが、こうなると芸能人の収入は激減する。

そして、上記で列挙した方たちは、多くの国民が知る有名な人ばかりである。言うなれば頂点に近い芸能人。こういう人たちは、知名度に加えて今までの貯えもあり、当面生活に困ることはないかもしれない。

しかし、芸能界はこういった有名な人たちだけではなく、無名の人の方が圧倒的大多数という厳しい世界である。無名な彼らはこのコロナ禍でもはや「生きていくのもやっと」という次元にいる可能性が高い。

大多数の無名の芸能人たちは、普通のサラリーマンよりも厳しい状況だろう。まだ売れていない芸人がアルバイトで生計を立てつつ、芸の道を目指すというのはよく聞く苦労話だが、そもそもコロナの影響で、世の仕事自体が大幅に減少している。よほど特別なスキルでもない限り、アルバイトで安心できる収入を確保するのは難しい。

一般人なら、今の仕事が難しいなら転職…とも思うところだが、この記事でも書いたとおり、アイドルや俳優など、ルックスを売りにする仕事はジョブチェンジが難しい。汎用的なビジネススキルを習得できる仕事ではないというのも、コロナ禍ではなおさらデメリットとなってしまう。

SNSの強みに気付いた

もう一つ大きいのはSNSの存在だ。昨今、多くの芸能人がYouTubeでチャンネルを開設している。芸人では、カジサックことキングコングの梶原雄太さん、オリエンタルラジオの中田敦彦さん、エガちゃんねるを開設した江頭2:50さんなどは、登録者が200万人を超えている。一度は反社勢力との黒い交際を指摘され、芸能界を去った宮迫博之さんもYouTubeデビューし、すでに100万人近い登録者を誇る。

もちろん芸人だけでなく、本田翼さん、藤田ニコルさん、ローラさんといった、女優、アイドル、モデルといった人たちも多い。

YouTubeは特に、登録者数が多くなればなるほど、その動画に挿入される広告収入が大きくなっていく仕組みである。すでに有名人と言っていい、ヒカキンさん、はじめしゃちょーさん、ヒカルさん、ラファエルさんなど、大物ユーチューバーの収入に、多くの人は驚くだろう。彼らの年収はどう見ても億単位である。

もちろんYouTubeだけでなく、多くのユーザーを獲得すれば、ツイッターアカウントを使った商品告知を企業から仕事として頼まれるケースも増え(これらは「案件」と呼ばれる)、自分で何かをPRしたい時も、ほとんど手間もコストもかからず宣伝が可能になる。

芸能界の限界

これは芸能人のみならず、一般人にも当てはまる。どのSNSも無料なので参入のハードルは低く、無名の一般人でも、やり方次第で一攫千金を狙えるのがSNSの魅力である。

多くの芸能人がこれに気付き始まった。先立の成功例も多数出てきている。安い給料をネタにされる事務所もあるが、今の社会風潮からすると、世間が安易にそれを容認してくれることもない。おまけに今はコロナ禍である。本当に食えない仕事となれば、笑い話では済まなくなってしまう。

それゆえ、経済的に苦しく、ジョブチェンジも難しい芸能人たちは、SNSにこぞって参入し始まったのではないだろうか?

ただこれは、裏を返せばそれだけ芸能界が経済的に厳しく、業界自体として制度疲労を起こしているとも言える。

見切りをつけられる芸能界

もちろん、どんな仕事でも辛い時期もあるし、頑張って上を目指すのは必要な努力である。しかし、以前は華やかに見えた芸能界も、このコロナ禍で壊滅的な打撃を受けている。

前述のとおり、未曽有のパンデミックといった状況下では、そもそも芸能活動が行えないので、収益が見込めない。しかし、厳しい言い方かもしれないが、今は芸能よりも命に関わる医療などの情報を国民は重視するだろう。

そのような中、以前と同様のスタイルで芸能人を育て、各業界に売り込もうとしても、もう無理なのである。バラエティー番組ではソーシャルディスタンスが守られ、スカスカの状況で収録をしている。Zoomなどのビデオツールを使い、オンラインで芸能人を参加させることもあるが、それなら最初からインターネット配信の方が良いのではないか。

テレビは芸能人の晴れ舞台として、頂点の一つと言っても良かっただろう。しかし、現在放映される番組を本当に見たいと思う視聴者はどれだけいるのだろう?正直、司会者とコメンテーターが、人の少ない派手なスタジオで同じ話題を延々と繰り返すのを見るのが有意義とは思えない。そしてチャンスを夢見る芸能人たちは、旧来のスタイルを止め、SNSへ注力していく。

日本のテレビ局の売上はどの局も数千億円程度。もちろん多額ではあるが、YouTubeを運営するGoogleの売上は十数兆円であり、全てのテレビ局の売上を足しても遠く及ばない。

コロナ禍による芸能界への需要の縮小とともに、芸能人の収入は激減し、活躍の場がなくなっていく。最初に書いた大物芸能人たちも、ずっと安泰ということはないかもしれない。 今後も事務所を辞め、SNSアカウントを開設する芸能人は後を絶たないだろう。それはとりもなおさず、芸能人や芸能界が「もはや食べていけない」存在となった証なのである。